てぃーだブログ › ミッション!パッション!!ハイテンション!!! › 法律 › どういう死に方をしたいですか? ~尊厳死宣言公正証書遺言~

2012年08月16日

どういう死に方をしたいですか? ~尊厳死宣言公正証書遺言~

  遺言とは、読んで字のごとく「思いを綴った言葉を現世に残す」という意味ですが、民法にある遺言の概念としては、その人自身の財産の処分方法を指定するのが主ですが、そのほかに重要な事項として遺言で認知をしたり、残された子の親権者に代わる未成年後見人を指定したり、財産を財団にして公益目的のために処分したりと、遺言の機能は多岐にわたります。

 その中で、先日、沖縄市にある公証人役場に公正証書遺言の謄本を取得しに訪れた際に、「公正証書遺言」のについてのポスターを何気なく眺めていると、中に「尊厳死宣言公正証書遺言」についての概要の説明がひっそりと貼られていました。

 「尊厳死」という言葉・概念、皆さんはご存じの方も多いとは思うのですが、私の理解では、回復の見込みのない末期の心身状態となった際に延命措置をとり少しでも長く心身の生存機能を留めることをやめ、人間の尊厳を最大限尊重しその人らしい死に方を尊重すること」としております。

 現代では、発達した先進医学により、末期のがんになっても、放射線・薬物・外科手術などを行うことにより治る、または終末期を延ばすことが可能になりました。ただ、終末期を延ばしても、そこには、筆舌に尽くしがたい大きな負担をを強いることになることになり本人、または家族が苦悩するということも実例として出てきました。それは果たして患者のためになるのか、誤解を恐れずに言うと、それは果たして患者が望んでいることなのか、という生命倫理をも巻き込んだ問題がわき起こり、今では、自分のことは自分で決めるという「自己決定権の尊重」という観点から、「尊厳死」も許容されるようになってきました。

 そこで、「遺言」という最終意思(意志)の発現の制度においても、尊厳死の意思(意志)を取り入れようという扱いがされております。

 哲学に及ぶ論点を内在した問題で、ライフマネジメントにおいて生き方・死に方など多様な考慮したい点にも及ぶ一度は考えなければならない事項だと思います。

 以下、日本公証人連合会からの同制度に関する詳説を抜粋します。

 過剰な延命治療を打ち切って、自然の死を迎えることを望む人が多くなってきていますが、その顕れとして、事実実験の一種として、「尊厳死宣言公正証書」の作成例も見られるようになってきました。
 「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」と解されています。近代医学は、患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方に忠実に従い、長らく、1分でも1秒でも生かすべく最後まで治療を施す治療が行われてきました。しかし、延命治療に関する医療技術の進歩により、患者が植物状態になっても長年生きている実例などがきっかけとなって、単に延命を図る目的だけの治療が、果たして患者の利益になっているのか、むしろ患者を苦しめ、その尊厳を害しているのではないかという問題認識から、患者本人の意思、すなわち、患者の自己決定権を尊重するという考えが重視されるようになってきました。「尊厳死」は,現代の延命治療技術がもたらした過剰な治療を差し控え又は中止し、単なる死期の引き延ばしを止めることであって許されると考えられるようになりました。
 近時、我が国の医学界などでも、尊厳死の考え方を積極的に容認するようになり、また、過剰な末期治療を施されることによって近親者に物心両面から多大な負担を強いるのではないかという懸念から、自らの考えで尊厳死に関する公正証書作成を嘱託する人も出てくるようになってきました。
 「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にする、というものです。
 ところで、尊厳死宣言がある場合に、自己決定権に基づく患者の指示が尊重されるべきものであることは当然としても、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまでは未だ考えられていないこと、治療義務がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面があること、などからすると、尊厳死宣言公正証書を作成した場合にも、必ず尊厳死が実現するとは限りません。もっとも、尊厳死の普及を目的している日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果によれば、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、平成15年は95.9パーセント、平成16年は95.8パーセントに及んでおり、このことからすると、医療現場でも、大勢としては、尊厳死を容認していることが窺えます。いずれにしろ、尊厳死を迎える状況になる以前に、担当医師などに尊厳死宣言公正証書を示す必要がありますので、その意思を伝えるにふさわしい信頼できる肉親などに尊厳死宣言公正証書をあらかじめ託しておかれるのがよいのではないかと思われます。尊厳死宣言公正証書の一例を、下記に記しておきますので、参考にしてみて下さい。

【文例 2】

尊厳死宣言公正証書
   本公証人は、尊厳死宣言者○○○○の嘱託により、平成○○年○月○日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
  第1条 私○○○○は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。
   1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。
   2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。
  第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。      妻   ○ ○ ○ ○   昭和  年 月 日生
     長男  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生
     長女  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生
    私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮ください。
  第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。
  第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。

【解説】
  (第1条関係)    1  この証書の核心部分で、延命治療の差し控え、中止の宣言と併せて苦痛除去のための麻薬などの使用による死期の早まりの容認を述べています。
   2  延命治療の差し控え、中止(尊厳死)が許容される場合として大方の意見の一致をみているのは、医学的所見により不治の状態にあり、死期が迫っていて、延命治療が人工的に死期を引き延ばすだけという状態にある場合です。したがって、植物状態になっただけでは、それがある程度継続していても、尊厳死を許容することについては、現状では問題が多く、公正証書化は無理かと思われます。
  ( 第2条関係)
 医療の現場では、延命治療の差し控え、中止をするか否かの判断に当たっては、本人の意思のほか、家族の了承が重んじられている現状にあるので、できれば、この文例にあるようにあらかじめ家族の了承を得ておくのが望ましいのです。
  ( 第3条関係)
 医療現場においては、刑事訴追を懸念するあまり、尊厳死宣言に対し、過剰に拒否的態度に出る医師もないとは限りませんので、この文例では、嘱託人が、その指示に従って医療をしてくれた医師等を捜査や訴追の対象にしないことを望むとの記載をしておくこととしたものです。
  ( 第4条関係)
 延命医療の差し控え、中止の意思は、治療行為の当時になければならないため、宣言が有効に撤回されない限り宣言の効力が持続している旨述べているのです。

 (日本公証人連合会HPhttp://www.koshonin.gr.jp/index2.htmlより )

 末尾になりますが、いつもお読み頂きありがとうございます!

 ふたばふたばふたばふたばふたば



 



同じカテゴリー(法律)の記事
初心からの会社のM&A
初心からの会社のM&A(2024-12-03 17:16)


Posted by ひるとん at 10:01│Comments(1)法律
この記事へのコメント
とても興味深く読ませていただきました。
もしも私自身が末期の状況にあればどのように死を迎えたいかと、ちょうど昨日考えていました。自然に囲まれた場所で過剰な延命処置はせず、静かに息を引き取れたらというのが昨日の私の結論でした。
Posted by nakamatchnakamatch at 2012年09月11日 10:55
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。